インドネシアが首都をジャカルタからヌサンタラに移転する計画には、様々なメリットが期待されていますが、実はメリットを考える前に首都ジャカルタがなくまったなしの移住、移転をヌサンタラにしなければならない驚愕の事実があるのです。
- 人口過密の解消 ジャカルタの人口過密で街が動かなくなる。
- JAKARTAが、2050年にほぼ水没する。(首都移転しか国を守れない!)
- 経済格差が更に広がり、暴動が各地で派生して治安が悪くなる。
- インドネシアは、大小17,000以上の島々から構成されている為、地域バランスを考え全国の経済発展の為、どうしても大きな島カリマンタンに大きな都市を作る必要がある
- グローバルウォーミングに伴う温暖化防止は待ったなしの喫緊の課題で、新首都は低炭素クーリング技術に基づく「森林都市」というコンセプトに基づく必要がある。
筆者は、2005年から11年間シンガポールからほぼ毎月JAKARTA通いJAKARTAの激しい交通渋滞(JLスデイルマンを100M車で動くのに20分も掛かる)を目の当たりにしてきた経験とカリマンタン島(ヌサンタラ)に度々通い旧CIPTA KARYA(チプタカリヤと昔は呼ばれていたインドネシア公共事業省)と幾度となくインドネシアのインフラのあるべき将来を話してきた経験から本編を深堀します。
2015年からは、2省の合併があり公共事業・国民住宅省 (PUPR)として活動しており
Ministry of Public Works and Housing, Jakarta、気候変動対策の一環として住宅の低炭素クーリング技術は、更なる高温多湿化の下で快適に生活するための方策へ集中しております。
インドネシアが首都をジャカルタからヌサンタラに移転する背景
そもそも首都をジャカルタからヌサンタラ【ワワサン・ヌサンタラ(インドネシア群島国家ビジョン)という国家ビジョンを表す】に移転する話は1980年ころから出ていて当時はふーんって感じでしたが、ここまで急に進むとは思いませんでした。
ウィキメディアによると、
ヌサンタラという言葉は、古ジャワ語(英語版)のnusa(島々)とantara(~の間)の複合語で、大まかに訳すと「島々の間の調和のとれた協力関係」のような意味になる。日本語報道では単に「群島」とも訳される。この言葉は当初、1293年から1530年代にかけて現在のインドネシア全土を治めていたマジャパヒト王国の領土の統一を意味するものだった[7][8]。
メリットというよりやらなければならない事実
メリット=やらなければならぬ事態になっており以下状況を纏めました。
1)一言で言うと人口集中に伴う渋滞解消が主な目的でありますが、公共事業・国民住宅省 (PUPR)としてはグローバルウォーミングに伴う温暖化に伴うJAKARTA水没を回避できない大きな懸念があります。
これはバンドン工科大学(インドネシアではNo.2)と言ってインドネシア理系でも指折りの大学が調査をして2050年度のJAKARTAでの浸水予想を出しております。
2)著しい経済成長を背景にエネルギー消費量が急増し地球温暖化が化石燃料により加速しており、JAKARTA水没の原因を自ら作っている。
エネルギー消費をしていく場所を分散していくしか方法はないのです。
3)首都移転によりインドネシア全体で経済成長が期待できる。
JAKARTA水没は避けれない
JAKARTA水没
じつはインドネシア政府が一番懸念しているのはJAKARTAが海抜ゼロメートル以下の低地に位置しており、2050年迄に市内全体の3分の1が水没するとバンドン工科大学が警鐘をならしているのが挙げられます。
インドネシア政府は、政府は海岸沿いに壁を建設しましたがあまりにも距離が長すぎて断念。ジャカルタは地球上で最悪の水没になる都市と言われております。
他のよすデータでは2025年までに北ジャカルタの75%以上が、水没。 2050年までに北ジャカルタの95%以上が、水没するとバンドン工科大学が試算されております。
理由として、地下水の過剰揚水や温暖化による海面上昇などの原因で地盤沈下が発生しており特に市内から空港へ向かう途中など面積の6割以上が海抜ゼロメートル以下の低地になっております。
実は、私がJAKARTAへ長期出張中2007年にはモンスーン豪雨で水位が33センチまで上がり、被害額は約550億ドルに達した大災害に見舞われ日系工場の床上浸水及び空港への道路が1週間近く閉鎖されるなど大変な大災害に見舞われた過去があります。
また19年4月末及び年末の豪雨により最大水位は6mに達し、約300の村を水没させジャカルタ市内は交通がすべてマヒし、まったなしの状態になりました。地下水の過剰くみ上げと地球温暖化による海面上昇が原因と言われておりますが、今対策を立てないと間に合わないといったインドネシア政府の危機感が見え隠れします。
高潮対策の海岸の防潮堤の強化や、溢れる水を海に流す排水場整備などの対処療法的な対策が行われてきたけれど、PROJECTが大型すぎて頓挫。そこで、ジャカルタは水道整備に力を入れると公共事業・国民住宅省 (PUPR)が発表したね。下水道普及率が、超低く100%の普及率を目指すとのことだ。ジャカルタでは配水網整備だけでなく、水源をなかなか確保できないという問題も抱えている。予算もなくJICAもお手伝いしているのだが。
著しい経済成長を背景にエネルギー消費量が急増【大気汚染増大】
インドネシアでは、著しい経済成長によりエネルギー消費量が急増してお
り、2018 年には世界第 11 位の温室効果ガス(Greenhouse Gas:GHG)排出国(535.04 百万トン)となっております。こうした背景から、同国政府は「GHG 削減のための国家行動計画(RAN-GRK)」を策定し2030 年を目標年に 海外からの支援を条件に 41%の GHG 排出量削減目標を打ち出しておりますがうまく進んいません。
建築分野においてもグリーンビルディング規制の制定を進めており、既にジャカルタ市(2012 年)、バンドン市(2016年)で採択に至っております。
新首都「ヌサンタラ」の本当の状況と将来
ヌサンタラの位置及び基本的なこと
インドネシア政府は新首都「ヌサンタラ」は、JAKARTAから飛行機で約1時間の北東に位置しており、港湾都市バリクパパン(Balikpapan)から直線距離で北北西約30数kmに位置している。
バリクパパン(Balikpapan)へもJAKARTAから直行便があり私も良く訪問しましたが、魚が美味しくとてもきれいな漁港です。
神奈川県の面積とほぼ同じ、およそ25万ヘクタールもの森林などの土地を切り開き開発を行っており、2022年から移転を開始し、2045年には完了させる計画です。
移転費用は466兆ルピア(約4兆3,800億円)を見込んでおり、そのうち2割は国費、残り8割を民間や諸外国からの投資などでまかなう予定です。
外国資本も誘致しないと費用が捻出できない為インドネシア政府として外交チャンネルを通じて各国にアプローチしておりますが、ジョコ大統領はPPPを主体に進めると明言しております。
日本企業へのPROJECTへの参加も非常に期待しておられるのは事実です。
インドネシアの国家開発企画庁(バペナス)は、2019年に首都移転の経済成長予測に触れました。 これによると、ジャワ島から首都を移転することによって、経済成長率を0.1%押し上げる効果が期待できるそうです。 これは、15兆ルピア(約1,142億1,500万円、2019年当時)にものぼる額で実際には、上振れしており2024年8月12日現在、インドネシア国家予算以外を財源とするヌサンタラへの投資額が累計で56兆2,000億ルピア(約5,283億円、1ルピア=約0.0094円)に達したと報道があり、いまだ小さな動きですがベースとなる施設は完成しつつあります。。
2024年8月現在起工した投資家は延べ55社になっております。
日本、中国など成長仕切った国は何か新しいことを考えて成長の歩みを止めないようにしない限り落ちていくしかないのです。
外資がインドネシアへ入れば人・モノ・金が動き空港の整備事業・インフラの整備・不動産の活性化など様々な面で雇用の機会を創出してPLUS面が出てきます。
外資などの規制及び進出状況
ヌサンタラ外資規制
ヌサンタラ市(Ibu Kota Negara)及びパートナー地域と言われている近隣地域へは事業活動を行う外国の事業者に対して外資規制を課さないと2023年インドネシア政府は発表しております。
1)ビジネスライセンス取得に関する規制の緩和
オンラインでヌサンタラ首都庁のOSSシステムを通じて申請が可能
2)ビジネス促進策の実施
依然として、インドネシア中小企業(零細企業)との協業を求められている
外国人労働者の規制がある(労働許可証の取得)
土地取得の権利は、直接土地の売買はできませんが、
事業権 最長95年
建設権 最長80年
使用権 最長80年
付与されるので問題ありません。
3)投資に関するインセンティブプラン
Indonesia中央政府が与えるインセンティブプランとして、
所得税と付加価値税(VAT)の優遇措置
また、ヌサンタラ首都庁の与えるインセンティブプランとして、
税制優遇措置他、土地とインフラに関する投資に関する優遇が発表されております。
いずれにせよGR12/2023で発表されている政府のコミットは大きなメリットになるので内容を注視して確認をされることをお勧め致します。
ヌサンタラへの外資の進出状況・動き
JICAの動き
インドネシア東カリマンタン州に開発中の新首都ヌサンタラでの工業団地開発に関す
る投資機会についてJICAは案内しております。
インドネシアでは東カリマンタンへの 2045 年までの首都移転
(新首都ヌサンタラ/IKN)に向け5段階のフェーズにもとづく都市開発に取り組み中。
Economic Superhub の実現に向け下記6つの経済クラスターの開発をJICAは掲げています。
(1)低炭素エネルギー (2)新再生可能エネルギーによる次世代産業 (3)統合医療
(4)サステナブル農業 (5)エコツーリズム (6)先端化学関連
また、東カリマンタンにおける不動産開発が大きな課題となっ
ています。
今後、新首都における産業振興、特に建設材料や化学、持続的農業セク
ター、さらに2060年のカーボンニュートラル実現に向けインドネシア政府が積極的
に投資誘致に取り組む脱炭素化エネルギーセクターにおいて拡大が予想される工業
用地需要への対応の必要性が指摘されています。
同課題解決に向けた取り組みとしてインドネシア政府は、新首都ヌサンタラの前
庭、玄関口としての北 Penajam Paser 県での工業団地開発プロジェクトを構想し、
投資省(BKPM)が窓口となって日本をはじめ広く外国企業からの投資を呼びかけ、
外資の協力を得ながら各種不動産需要への対応を図ろうとしております。
【プロジェクト名】
Buluminung Industrial Estate Project
この取り組みにおいて、東カリマンタンにおける不動産開発が大きな課題となっ
ています。
今後、新首都を含む東カリマンタン州の大幅な人口増加が見込まれる中、
住居、オフィス用物件、商業、スポーツ施設等の事業用不動産の拡充への対応の必
要性が指摘されています。
同課題解決に向けた取り組みとしてインドネシア政府は、新首都ヌサンタラの前
庭、玄関口としての北 Penajam Paser 県での事業用不動産開発プロジェクトを構想
し、投資省(BKPM)が窓口となって日本をはじめ広く外国企業からの投資を呼びか
け、外資の協力を得ながら各種不動産需要への対応を図ろうとしております。
外資 100%での参入を可能としております。
しかしながら、残念ながら日系企業の動きは非常に遅いと言わざるを得ません。
日本TEAMのヌサンタラ視察中
《実施時期》2024年7月上旬から9月下旬までの間
《渡航日程》
月曜/東京→ジャカルタ(日本または他国からご参加の場合)
火曜/午前:プロジェクト詳細説明(BKPM,工業省等) 於:ジャカルタ市内ホテル
午後:日本企業との取引を希望するインドネシア企業のプレゼンテーション
水曜/午前:ジャカルタ→プロジェクトサイト(空路移動)
午後:プロジェクトサイト視察第1日目
木曜/終日:プロジェクトサイト視察第2日目
金曜/午前:プロジェクトサイト→ジャカルタ(空路移動)
午前~午後:インドネシア政府との総括質疑応答 於:投資省庁舎
(日本からご参加の場合)21:00~22:00の便で日本へご帰国
ヌサンタラ開発状況の最新実態とインドネシア政府の悩み
1)ジョコ大統領が退任(2024年度の大統領選挙には出れない、2期10年が任期である為)を控え、企業が投資を様子見する動きがあるのも事実。
2)インドネシア政府国内であつれきが生じている。移転事業を担当する行政機関「ヌサンタラ首都庁」の長官らが6月上旬、突如辞任した。
首都移転の取り組みを性急とみており、計画を推進するジョコ政権とわだかまりがあったようだ。
3)2023年7月ごろから閣僚や公務員の移住が始まるがジェスチャーとの話が出ている。
まだ大統領府の建設と公民住宅を優先しており街とは到底言えない状況です。
ヌサンタラの人口増予想
公式な発表、データはありませんが、ヌサンタラ(インドネシア語 Ibu Kota Nusantara, IKN)は、ボルネオ島(カリマンタン島)の東海岸、東カリマンタン州に位置しています。 東カリマンタン州の人口は400万人未満です。
ヌサンタラは、公式な発表では2045年に200万人を目指すと政府が言っているが、現在の人口は正確な数字は見当たらないが推定30万人程度である為、そう簡単に6倍に2045年になるとは考えにくいです。
インドネシアの人口は2030年には約2億9,590万人、2050年には約3億2,070万人に達すると見込まれており、2058年に約3億2,260万人でピークを付けた後、2022年時点でのインドネシアの人口は世界4位だが、2045年にはナイジェリアとパキスタンに抜かれ6位まで後退する見通しが出ているので個人的には2045年で現在の5倍である150万人程度が現実的な数字ではないかと推測している。
ヌサンタラ移転に反対する意見
当然、ヌサンタラ移転に反対する意見もいくつか出ております。
- まずは環境破壊の懸念です。東カリマンタンは行かれればすぐわかりますが、いまだジャングルと言っていいほど森林に囲まれており、地球温暖化の防止にブラジルの森林と合わせて大きな効果があると言われています。本開発によりおよそ25万ヘクタールもの森林などの土地を切り開き開発を行うことによる環境破壊の懸念は事実です。
- インドネシアの公共投資や民間投資では限界があり、当然外資によるPPP(Public Private Pertnership)か民間投資が必要ですがそう簡単に数兆円もの資金は集められないのとあまり一時期に建設が進むとWORKERが不足します。
- 日本では、ソフトバンクがいったん出資を表明しましたが中断になったようです。
- 資金調達面の問題、過去2年間で約32兆ルピア(20億ドル)が国家予算から支出され、2024年度予算ではさらに40兆6000億ルピアが計画されています。民間企業からは、35兆9000億ルピアが支出されています。「推定費用:320億ドル(466兆ルピア)」ですから、まだまだ全然足らないというの現状です。
- インドネシア政府は新首都建設を支援する外国投資の誘致に懸命に取り組んでいますが、現段階では外国企業はそれほど積極的に投資する状況になっていないのです。
まとめ
1)東カリマンタンのヌサンタラを開発するのは多くのメリットがあるとは思うが、予算もないのにあまりにも成果を出したいためにリップサービスばかり目立っております。
2)しかしながら世界中で投資対象となる国を慎重にみると東南アジアでは今はベトナム、カンボジアであるがもうすぐ終了(開発仕切ってしまう)してしまうのでこれからはアフリカ・ウズベキスタンなど聞こえてきます。
(実は数年前までは、私がいたミャンマーを最後の楽園と言っていたのです)
3)多少、長い目で先行投資されカリマンタンに支社・支店を作るくらいにされ事業機会を伺うのは間違ってはいないと考えIndonesiaから目を離さない努力が必ず報われる日が来ると信じております。
現状の考えるメリットは
- JAKARTA一極集中を避けた分散化による交通渋滞などの経済的なロス回避
- JAKARTAの水没時海岸沿いは使えなくなるので分散が必要
- インドネシアへ外資が入ってくることにより更にインフラ整備・不動産投資などが活発になり経済効果が大きい
- 「森林都市(forest city)」というコンセプトに基づいて設計するので環境に配慮して、スマートな都市のモデル事業が実行できる
- 多くの雇用を創出できる
4) 特に長期的に考えると不動産業界の仕事は必ず増えると考えるので、海外に強いAGENTへ登録されご自身のINDONESIAでの活躍の場を探されるのも投資家でない生き方のひとつとして考えられます。